「水槽の中の魚」 はやし浩司先生の育児・教育指導
水槽で熱帯魚を飼うようになって、もう14年目になる。
平成元年に飼い始めたから、14年という数字にはまちがいはない。
その熱帯魚たち。ときどきその熱帯魚を見ながら、私はこう考える。
「この魚たちにとっては、この水槽が全世界なのだろうな」「生まれから死ぬまで、一生、水槽の中に住んでいるから、外の世界を知る由(よし)もない」と。
考えてみれば、人間の意思も似たようなものだ。
たとえば「自由」にしても、自由な世界を知ってはじめて、不自由な世界がどういうものかがわかる。
たとえば江戸時代という時代。
あの時代は、世界の歴史の中でも、類をみないほどの暗黒かつ恐怖政治の時代であった。
それは客観的にみれば事実なのだが、ではその時代に住んだ人がそう感じていたかどうかは疑わしい。
あの時代の人は、徹底した鎖国制度のもと、外国へ出るということすら許されなかった。
だから外の世界など、知る由もなかった。
それはちょうど、今の北朝鮮の人たちのようなものではないか。
日本という外の世界からみると、ずいぶんと窮屈な感じがするが、では当の北朝鮮の人たちがそう感じているかどうかは、疑わしい。
彼らは彼らで、結構自分たちの国は自由な国だと思っているかも知れない。
聞くところによると、首都のピョンヤンに住めるのは、ごく一部のエリートだけという話だ。
それに旅行すら自由にできなという話も聞いている。
が、だからといって、日本が自由の国だとか、また日本人がもっている意識は、グローバルな意味で、世界の標準だと思うのは危険なことである。
ひょっとしたら私たち日本人とて、水槽の中の熱帯魚と同じかもしれない。そういう例は、実は教育の世界には多い。
たとえば私が、三井物産という会社をやめ、結果的に幼稚園の講師になったとき、みなは、「はやしは頭が狂った」と笑った。母まで、電話口でオイオイと泣き崩れてしまった。
しかしそんな中でも、私を支えてくれたのが、オーストラリアの友人たちだった。
「ヒロシ、すばらしい選択だ!」と。
こうした意識の違いというのは、それがない人には理解できないものであり、それがある人には、外で呼吸をするくらい当たり前のことなのだ。
そういう意味でも、意識の違いというのは恐ろしい。
たとえば今の「私」ですら、ひょっとしたら私という範囲の中だけで「私」なのかもしれない。
ほんの少し意識が変われば、私は私でなくなってしまう可能性だってある。絶対的に正しいものなどというのは、ないということか?
今日も水槽の中の熱帯魚を見ながら、私はそんなことを考えた。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー11
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。