「不思議な世界」 はやし浩司先生の育児・教育指導
不思議な世界だった。何とも現実離れした世界だった。
ふと油断すると、そのまま夢の世界に引きずり込まれていくような世界だった。
私はある会議のメンバーに選ばれた。
私が選ばれたのは、明かに主催者の人選ミスによるものだった。で、私以外は、この日本でもそれぞれの分野で1、2を争うような著名人ばかりだった。
東大の宇宙工学の松井教授、哲学者の山折氏、解剖学の養老氏などなど。
アーティストの藤井フミヤ氏もいたし、キャスターの草野さんもいた。
会議の途中でだれかが、「ここにいる方は、講演をしても、1時間数百万円。ワンステージ、数千万円の方たちです」と言ったが、私以外は、まさにそういう人物ばかりだった。
そういう人たちの間にすわっていると、おかしな気分に襲われる。
第一に、「同じ人間のはずだが」という思い。つぎに「どこが違うのだろう」という思い。さらに「限りなく自分が小さくなっていく」という思い。
そういう思いが、それぞれの方向からやってきて、頭の中で複雑に交錯する。が、もうこうなると会議どころではない。「私は今まで何をしてきたのだろう」という悔恨の念すら襲ってくる。
が、やがて私は気づいた。たとえば本の数にしても、あるいは私が歩んできた道にしても、私は何も劣るものではない、と。……と、書くと、「何をうぬぼれたことを!」と思う人がいるかもしれない。しかしこれだけははっきりと言える。
日本人にはコースがある。
そのコースに、それも最初の段階で乗れば、あとは想像以上に楽な人生を送ることができる。
公立大学のばあい、ほうっておいても、助手、講師、助教授、教授。さらには学部長……と、トコロテン方式で肩書きが待っている。
そしてそのあとも、例外なく天下り先が待っている。
あの旧文部省だけでも1800団体近い外郭団体がある。で、その上で、有名になるかどうかは、まさに紙一重の「運」である。
その運に、二つ、三つと恵まれれば、あとはもう……。これ以上のことを書くと、会議に出た人たちに失礼なので書けないが、この日本という国は、そういうしくみの中で動いている。
会議が、3回目、4回目とつづくうちに、私はそれに気づいた。
私と彼らの間にあるのは、「運」だけだ、と。力ではない。「運」だ、と。
とたん、私の心の中をスーッと風が通るのを感じた。
私はあやうく、夢の世界に引きずりこまれるところだった。現実を忘れるところだった。
「私は私」という、あの私の哲学を忘れることころだった。
これは決して負け惜しみではない。敗北を認めたということでもない。
……が、考えてみれば、こういう世界があるから、結局は学歴社会はなくならない。
そのための受験競争はなくならないし、教育のひずみもなおらない。
だいたいにおいて、講演料が数百万円なんて、(少しオーバーだろうが)、……? そちらの世界のほうが狂っている! 本当に、本当に、不思議な世界だった。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー11
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。