「知識と思考」 はやし浩司先生の育児・教育指導
知識は、記憶の量によって決まる。
その記憶は、大脳生理学の分野では、長期記憶と短期記憶、さらにそのタイプによって、認知記憶と手続記憶に分類される。
認知記憶というのは、過去に見た景色や本の内容を記憶することをいい、手続記憶というのは、ピアノをうまく弾くなどの、いわゆる体が覚えた記憶をいう。
条件反射もこれに含まれる。
で、それぞれの記憶は、脳の中でも、それぞれの部分が分担している。
たとえば長期記憶は大脳連合野(連合野といっても、たいへん広い)、短期記憶は海馬、さらに手続記憶は「体の運動」として小脳を中心とした神経回路で形成される(以上、「脳のしくみ」(日本実業出版社)参考、新井康允氏)。
でそれぞれの記憶が有機的につながり、それが知識となる。
もっとも記憶された情報だけでは、価値がない。
その情報をいかに臨機応変に、かつ必要に応じて取り出すかが問題によって、その価値が決まる。
たとえばAさんが、あなたにボールを投げつけたとする。
そのときAさんがAさんであると認識するのは、側頭連合野。
ボールを認識するのも、側頭連合野。しかしボールが近づいてくるのを判断するのは、頭頂葉連合野ということになる。
これらが瞬時に相互に機能しあって、「Aさんがボールを投げた。このままでは顔に当たる。あぶないから手で受け止めろ」ということになって、人は手でそれを受け止める。
しかしこの段階で、手で受け止めることができない人は、危険を感じ、体をよける。
この危険を察知するのは、前頭葉と大脳辺縁系。
体を条件反射的に動かすのは、小脳ということになる。
人は行動をしながら、そのつど、「Aさん」「ボール」「危険」などという記憶を呼び起こしながら、それを脳の中で有機的に結びつける。
こうしたメカニズムは、比較的わかりやすい。しかし問題は、「思考」である。
一般論として、思考は大脳連合野でなされるというが、脳の中でも連合野は大部分を占める。で、最近の研究では、その連合野の中でも、「新・新皮質部」で思考がなされるということがわかってきた(伊藤正男氏)。
伊藤氏の「思考システム」によれば、大脳新皮質部の「新・新皮質」というところで思考がなされるが、それには、帯状回(動機づけ)、海馬(記憶)、扁桃体(価値判断)なども総合的に作用するという。
少し回りくどい言い方になったが、要するに大脳生理学の分野でも、「知識」と「思考」は別のものであるということ。まったく別とはいえないが、少なくとも、知識の量が多いから思考能力が高いとか、反対に思考能力が高いから、知識の量が多いということにはならない。
もっと言えば、たとえば一人の園児が掛け算の九九をペラペラと言ったとしても、算数ができる子どもということにはならないということ。いわんや頭がよいとか、賢い子どもということにはならない。
そのことを説明したくて、あえて大脳生理学の本をここでひも解いてみた。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー10
NO’217〜NO’240
●新居の関所 | ●一芸論 |
●便利な世界 | ●一芸は聖域 |
●案ずるより産むがやすし | ●フリ勉、ダラ勉、時間ツブシ |
●威圧で閉じる子どもの耳 | ●勉強が苦手な子ども |
●よい子論 | ●「今」の価値を忘れない |
●子どもの家出 | ●ええじゃないか |
●現場主義 | ●子どもの創造力 |
●子どもの意地 | ●習うより慣れる |
●子どもの自我 | ●子どもの嫉妬 |
●いじめられっ子は徳をつむ? | ●子どもの闘争心 |
●ホームスクール | ●権威主義者 |
●いたずらとジョーク | ●無限ループの世界 |
NO’1〜NO’24 | NO’73〜NO’96 | NO’145〜NO’168 |
NO’25〜NO’48 | NO’97〜NO’120 | NO’169〜NO’192 |
NO’49〜NO’72 | NO’121〜NO’144 | NO’193〜NO’216 |
NO’217〜NO’240 | NO’241〜NO’264 | NO’265〜NO’282 |
NO’283〜NO’292 |
情報・画像の出展:はやし浩司先生
※このページの文章・及び画像の著作権は「はやし浩司」様が保有しています。
当サイトでは「はやし浩司」様のご厚意により許可を得て掲載させていただいております。
【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。