「子どもへの虐待」 はやし浩司先生の育児・教育指導
親だから……というふうに、ものごとは決めてかかってはいけない。
「親だから子どもを愛する心があるはず」とか。
先日も朝のワイドショーを見ていたら、キャスターの1人がそう言っていた。
しかし実際には、人知れず子どもを愛することができないと悩んでいる母親は多い。
「弟は愛することができるが、兄はどうしてもできない」とか、あるいは「子どもがそばにいるだけで、わずらわしくてしかたない」とかなど。
私の調査でも子どもを愛することができないと悩んでいる母親は、約10%(私の母親教室で約200人で調査)。
東京都精神医学総合研究所の調査でも、自分の子どもを気が合わないと感じている母親は、7%もいることがわかっている。
そして「その大半が、子どもを虐待していることがわかった」(同、総合研究所調査・有効回答500人・2000年)そうだ。
妹尾栄一氏らの調査によると、約40%弱の母親が、虐待もしくは虐待に近い行為をしているという。(妹尾氏らは虐待の診断基準を作成し、虐待の度合を数字で示している。
妹尾氏は、「食事を与えない」「ふろに入れたり、下着をかえたりしない」などの17項目を作成し、それぞれについて、「まったくない……0点」「ときどきある……1点」「しばしばある……2点」の3段階で親の回答を求め、虐待度を調べた。その結果、「虐待あり」が、有効回答(494人)のうちの9%、「虐待傾向」が、30%、「虐待なし」が、61%であったという。)
だからといって、子どもの虐待が肯定されるわけではない。
しかしこの虐待の問題は、もう少し根が深いのではないか。
その一つのヒントとして、今の母親たちの世代というのは、日本が高度成長をやり遂げた時期に乳幼児期を過ごしている。そしてそのうちの大半が、かなり早い時期から親の手を離れ、保育園や保育所へ預けられた経験をもっている。
つまり生まれながらにして、本来あるべき親の愛情が希薄な状態で育てられている。
もちろんそれだけが理由とは言えないが、子育てというのは本能でできるようになるわけではない。
親の温かい愛情に包まれて育ってはじめて、親になったとき、自分も子どもを温かい愛情で包むことができる。このことを考え合わせると、子どもを虐待する親というのは、そもそもそういう温かい愛情を知らない親と考えてよい。
そしてその理由として、日本が戦後経験した、いびつな社会構造にあるのではないかと考えられる。
私たち日本人は、仕事第一主義のもと、「家庭」や「家族」をあまりにもないがしろにし過ぎた。
つまり今にみる子どもへの虐待は、あくまでもその結果でしかないということになる。
子どもを虐待する親もまた、自分ではどうしてよいかわからず苦しんでいる。
世間一般は、子どもを虐待する親を、ただ一方的に責める傾向があるが、その親たちもまた現在の社会が生み出した犠牲者と考えてよい。
虐待に対する一つの見方としてこの原稿をとらえてほしい。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー9
NO’193〜NO’216
●自分を知る | ●汗はかかせる |
●教育と指導 | ●あせる親は結論も早い |
●いい学校から、いい家庭へ | ●遊びが子どもの仕事 |
●疑いをいだかない愛 | ●思考回路 |
●愛情は落差の問題 | ●構造的な問題 |
●愛想は悪くて当たり前 | ●知識と学力 |
●子どもへの虐待 | ●頭を良くする方法 |
●あきらめは悟りの境地 | ●読書のしつけ |
●悪筆、言ってなおらず | ●あと一歩でやめる |
●普通こそ最善 | ●個性は生きザマ |
●それ以上、何を望むか | ●アルバムをそばに置く |
●己こそ、己のよるべ | ●前向きの暗示を |
NO’1〜NO’24 | NO’73〜NO’96 | NO’145〜NO’168 |
NO’25〜NO’48 | NO’97〜NO’120 | NO’169〜NO’192 |
NO’49〜NO’72 | NO’121〜NO’144 | NO’193〜NO’216 |
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。