「教育と指導」 はやし浩司先生の育児・教育指導
私の最大のジレンマ。
それは私の説く教育論など、だれも求めてはいないということ。
また社会的にも一片の価値もないということ。
傍観者が見れば、私という物好きな男が、社会のかたすみで勝手にほえているに過ぎない。しかも私がいくら訴えても、社会は微動だにしない……。
だいたいにおいて私のようなものが、教育を説くこと自体おこがましい。
常日ごろの生活において、人に教えるようなこと、あるいは教えられるようなことは何一つ、していない。
たまたま子どもを教えてきたというだけだが、それは教えるというよりは、指導。しかし指導は教育ではない。
よく受験塾を経営しながら教育論を説く人がいるが、それはまるで暴力団の組員が平和論を説くようなもの。いくら偉そうなことを言っても、どこかチグハグで説得力がない。
彼らは教育など、していない。受験指導をしているにすぎない。
そこで私こう考えるようにしている。教育と指導は別のものである、と。
しかしこの二つを分けるのはむずかしい。そこでさらにこう考えるようにしている。
指導は指導して考え、その指導から生まれるより人間的な指導を「教育」と。が、これでもわかりにくい。一つの例をあげて考えてみよう。
たとえば一人の青年が自動車教習所へ通ったとする。
その自動車教習所では、生徒に車の運転のし方を教える。運転ができるようにするのが、その目的だ。で、その青年が運転できるようになったとする。
そこで問題は、その青年はその教習を受ける段階で、何かを学んだかということ。
結論から言えば、何も学んでいない。学んでいないから、それは教育ではない。……となると、またわからなくなる。そこでまた視点を変えて考えてみる。
一人の幼稚園児が一生懸命、穴を掘っていたとする。
そこで私が「何をしているの?」と声をかけたとする。するとその子どもが、「石の赤ちゃんをさがしている」と答えたとする。
その子どもは石は土の中から生まれるものと思っていた。そこで私が「そうだね、きっと赤ちゃんがいるかもしれないね」と言う。するとその子どもはますます懸命に穴を掘り始める。
これは私が実際経験したエピソードだが、これは教育だ。
私は子どもの考えを認め、子どもに考えるヒントを与えた。子どもは子どもなりの考えで、自分の説を証明しようと穴を掘りつづけた。
この段階で、子どもはまちがっているとか、まちがっていないとかいう判断は、それをくだすこと自体、まちがっている。
今、単なる指導を教育と誤解しているケースがあまりにも多い。
たとえば受験指導をしながら、それが教育と思い込んでいる教師すらいる。
しかし教育と指導は、本質的に異質なものである。
どこでどう分けるかは、ここに書いたように、たいへん微妙な問題を含んでいるため、一概には言えない。が、しかし心のどこかで分けて考える必要はある。でないと、何がなんだか、わけがわからなくなってしまう。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー9
NO’193〜NO’216
●自分を知る | ●汗はかかせる |
●教育と指導 | ●あせる親は結論も早い |
●いい学校から、いい家庭へ | ●遊びが子どもの仕事 |
●疑いをいだかない愛 | ●思考回路 |
●愛情は落差の問題 | ●構造的な問題 |
●愛想は悪くて当たり前 | ●知識と学力 |
●子どもへの虐待 | ●頭を良くする方法 |
●あきらめは悟りの境地 | ●読書のしつけ |
●悪筆、言ってなおらず | ●あと一歩でやめる |
●普通こそ最善 | ●個性は生きザマ |
●それ以上、何を望むか | ●アルバムをそばに置く |
●己こそ、己のよるべ | ●前向きの暗示を |
NO’1〜NO’24 | NO’73〜NO’96 | NO’145〜NO’168 |
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。