
適切な幼児教育は後の人間形成において大変重要であると考えていますが注意していただきたいことがあります。
幼児教育は完璧な育児や教育を推奨するものではないということです。
・愛情が第一を忘れない
・他の子どもと比較をしない
・完璧主義にならない
・結果を期待しすぎない
・ゆったりとした心を持つ
子どもへの過剰な期待は親子共に大きなストレスになる危険性あります。
ゆったりと構え、少しくらい上手くいかなくても「まぁ、いっか。」に考えられることが幼児教育を続けられるポイントになります。
「虐待される子ども」について はやし浩司先生の子育て随筆
ある日曜日の午後。一人の子ども(小五男児)が、幼稚園に駆け込んできた。富士市で幼稚園の園長をしているI氏は、そのときの様子を、こう話してくれた。
「見ると、頭はボコボコ、顔中、あざだらけでした。泣くでもなし、体をワナワナと震わせていました」と。虐待である。逃げるといっても、ほかに適当な場所を思いつかなかったのだろう。その子どもは、昔、通ったことのある、その幼稚園へ逃げてきた。
カナーという学者は、虐待を次のように定義している。(1)過度の敵意と冷淡、(2)完ぺき主義、(3)代償的過保護。ここでいう代償的過保護というのは、愛情に根ざした本来の過保護ではなく、子どもを自分の支配下において、思い通りにしたいという、親のエゴに基づいた過保護をいう。
その結果子どもは、(1)愛情飢餓(愛情に飢えた状態)、(2)強迫傾向(いつも何かに強迫されているかのように、おびえる)、(3)情緒的未成熟(感情のコントロールができない)などの症状を示し、さまざまな問題行動を起こすようになる。
I氏はこう話してくれた。「その子どもは、双子で生まれたうちの一人。もう一人は女の子でした。母子家庭で、母親はその息子だけを、ことのほか嫌っていたようでした」と。
私が「母と子の間に、大きなわだかまりがあったのでしょうね」と問いかけると、「多分その男の子が、離婚した夫と、顔や様子がそっくりだったからではないでしょうか」と。
親が子どもを虐待する理由として、ホルネイという学者は、(1)親自身が障害をもっている。(2)子どもが親の重荷になっている。(3)子どもが親にとって、失望の種になっている。(4)親が情緒的に未成熟で、子どもが問題を解決するための手段になっている、の四つをあげている。
それはともかくも、虐待というときは、その程度が体罰の範囲を超えていることをいう。I氏のケースでも、母親はバットで、息子の頭を殴りつけていた。わかりやすく言えば、殺す寸前までのことをする。そして当然のことながら、子どもは、体のみならず、心にも深いキズを負う。学習中、一人ニヤニヤ笑い続けていた女の子(小二)。夜な夜な、動物のようなうめき声をあげて、近所を走り回っていた女の子(小三)などがいた。
問題をどう解決するかということよりも、こういうケースでは、親子を分離させたほうがよい。教育委員会の指導で保護施設に入れるという方法もあるが、実際にはそうは簡単ではない。
父親と子どもを半ば強制的に分離したため、父親に、「お前を一生かかっても、殺してやる」と脅されている学校の先生もいる。あるいはせっかく分離しても、母親が優柔不断で、暴力を振るう父親と、別れたりよりを戻したりを繰り返しているケースもある。
結論を言えば、たとえ親子の間のできごととはいえ、一方的な暴力は、犯罪であるという認識を、社会がもつべきである。そしてそういう前提で、教育機関も警察も動く。いつか私はこのコラムの中で、「内政不干渉の原則」を書いたが、この問題だけは別。
子どもが虐待されているのを見たら、近くの児童相談所へ通報したらよい。「警察……」という方法もあるが、「どうしても大げさになってしまうため、児童相談所のほうがよいでしょう。そのほうが適切に対処してくれます」(S小学校N校長)とのこと。
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【付録】
●虐待について
社会福祉法人「子どもの虐待防止センター」の実態調査によると、母親の五人に一人は、「子育てに協力してもらえる人がいない」と感じ、家事や育児の面で夫に不満を感じている母親は、不満のない母親に比べ、「虐待あり」が、三倍になっていることがわかった(有効回答五〇〇人・二〇〇〇年)。
また東京都精神医学総合研究所の妹尾栄一氏は、虐待の診断基準を作成し、虐待の度合を数字で示している。妹尾氏は、「食事を与えない」「ふろに入れたり、下着をかえたりしない」などの一七項目を作成し、それぞれについて、「まったくない……〇点」「ときどきある……一点」「しばしばある……二点」の三段階で親の回答を求め、虐待度を調べた。
その結果、「虐待あり」が、有効回答(四九四人)のうちの九%、「虐待傾向」が、三〇%、「虐待なし」が、六一%であった。この結果からみると、約四〇%弱の母親が、虐待もしくは虐待に近い行為をしているのがわかる。
一方、自分の子どもを「気が合わない」と感じている母親は、七%。そしてその大半が何らかの形で虐待していることもわかったという(同、総合研究所調査)。「愛情面で自分の母親とのきずなが弱かった母親ほど、虐待に走る傾向があり、虐待の世代連鎖もうかがえる」とも。
●ふえる虐待
なお厚生省が全国の児童相談所で調べたところ、母親による児童虐待が、一九九八年までの八年間だけでも、約六倍強にふえていることがわかった。(二〇〇〇年度には、一万七七二五件、前年度の一・五倍。この一〇年間で一六倍。)
虐待の内訳は、相談、通告を受けた六九三二件のうち、身体的暴行が三六七三件(五三%)でもっとも多く、食事を与えないなどの育児拒否が、二一〇九件(三〇・四%)、差別的、攻撃的言動による心理的虐待が六五〇件など。
虐待を与える親は、実父が一九一〇件、実母が三八二一件で、全体の八二・七%。また虐待を受けたのは小学生がもっとも多く、二五三七件。三歳から就学前までが、一八六七件、三歳未満が一二三五件で、全体の八一・三%となっている。
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。