【代理ミュンヒハウゼン症候群】(Personality Disorder)

 

【代理ミュンヒハウゼン症候群】(Personality Disorder)  はやし浩司先生の教育アドバイス

はやし浩司先生 献身的な介護者を装いながら、その裏で、被介護者を虐待する。
相手は夫であったり、祖父母であったりする。
兄弟のこともある。
自分の子どもであることも多い。

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12月24日に、こんなニュースがヤフー・ニュースサイトに載っていた。

+++++++++++++以下、ヤフー・ニュースより++++++++++++++

病気で入院している五女(1歳10カ月)の点滴に異物を混入し殺害しようとしたとして、K府警捜査1課と川端署は24日、岐阜県S市の無職の女(35)を、殺人未遂容疑で逮捕した。女は「子どもの病気が悪化すれば付き添ってやれると思った」と供述し、殺意を否認しているという。

(中略)

 23日午後5時半ごろ、女が点滴の管を触ったり、ポケットから何かを取り出したりする仕草がビデオに映ったことから、警察官が職務質問し、所持品から注射器を発見。24日になって、腐りやすいようスポーツドリンクを混ぜた水を7〜10日放置し、混入したことを認めたという。

 府警によると、逮捕された女は、人の注意を引きつけるために病気の症状をまねる精神疾患の一種ではないかと医療関係者から指摘されていた。この疾患では、子どもを病人に仕立て、献身的な介護者を演じることもあると報告されているという。(ヤフーニュース081224)

+++++++++++++以下、ヤフー・ニュースより++++++++++++++

このニュースの中で注目すべき点は、終わりあたりに書いてある、「人の注意を引きつけるために、病気の症状をまねる精神疾患の一種ではないかと医療関係者から指摘されていた。この疾患では、子どもを病人に仕立て、献身的な介護者を演じることもあると報告されているという」という部分。

典型的な「代理ミュンヒハウゼン症候群」と呼ばれる、精神疾患のひとつである。
近年、虚偽性人格障害(演技性人格障害)※の一種として位置づけられ、治療の対象にもなっている。

●フリをする母親

昔、自分を病人に見たてて、病院を渡り歩く男がいた。そういう男を、イギリスのアッシャーという学者は、「ミュンヒハウゼン症候群」と名づけた。
ミュンヒハウゼンというのは、現実にいた男爵の名に由来する。
ミュンヒハウゼンは、いつも、パブで、ホラ話ばかりしていたという。

その「ミュンヒハウゼン症候群」の中でも、自分の子どもを虐待しながら、その一方で病院へ連れて行き、献身的に看病する姿を演出する母親がいる。
そういう母親を、「代理ミュンヒハウゼン症候群」という(以上、参考、「心理学用語辞典」かんき出版)。

このタイプの母親というか、女性は、多い。

自分に対して(演技する)のが、ミュンヒハウゼン症候群。
子どもなど、だれかを代理させて(演技する)のが、代理ミュンヒハウゼン症候群。
しかし代理になる対象は、けっして(子ども)だけではない。
実の親、兄弟ということもある。
また(病院)だけが舞台とはかぎらない。
家庭や介護センターなどでも、ある。

「ミュンヒハウゼン症候群」と私の立場では断言できないが、私の知っている女性(当時50歳くらい)に、一方で、姑(義母)を虐待しながら、他人の前では、その姑に献身的に仕える、(よい嫁)を演じていた人がいた。

その女性は、夫にはもちろん、夫の兄弟たちにも、「仏様」と呼ばれていた。
しかしたった一人だけ、その姑は、嫁の仮面について相談していた人がいた。
それがその姑の実の長女(当時50歳くらい)だった。

そのため、その女性は、姑と長女が話しあうのを、何よりも、警戒した。
当然のことながら、その長女を、嫌った。

さらに、実の息子を虐待しながら、その一方で、人前では、献身的な看病をしてみせていた女性(当時60歳くらい)もいた。

虐待といっても、言葉の虐待である。「お前なんか、早く死んでしまえ」というようなことを、一方で言いながら、子どもが病気になると、病院へ連れて行き、その息子の背中を、しおらしく、さすって見せるなど。

「近年、このタイプの虐待がふえている」(同)とのこと。

実際、このタイプの女性と接していると、何がなんだか、訳がわからなくなる。
仮面をかぶっているというより、人格そのものが、バラバラ。
何を考えているか、それがつかめない。
どこか不気味。
そんな印象をもつ。

もちろん、子どものほうも、混乱する。子どもの側からみても、よい母親なのか、そうでないのか、わからなくなってしまう。
たいていは、母親の、異常なまでの虐待で、子どものほうが萎縮してしまっている。
母親に抵抗する気力もなければ、またそうした虐待を、だれか他人に訴える気力もない。
あるいは母親の影におびえているため、母親を批判することさえできない。

虐待されても、母親に、すがるしか、ほかに道はない。悲しき、子どもの心である。

●私の知っている例

ヤフー・ニュースにもあるように、このタイプの女性は、(圧倒的に女性が多い)、
(1)他人の注意をひくため
(2)他人の同情をかうため
(3)他人から自分を、高く評価してもらうために、そうする。

今回の事件は、母親が実の子どもに対してした事件である。
点滴の中に、腐った水を注入していたという。
しかし殺すのが目的ではない。
(殺すなら、そんな回りくどい方法は、とらない。
またその度胸もない。
元来、気の小さい人とみる。)
このタイプの女性は、献身的な介護ぶりを演じ、それでもって自分をよく見せるのが、目的である。

私が知っているケースに、実の弟に対して、それを繰り返していた女性(当時、60歳くらい)がいた。
私が見舞いに行ったりすると、私たちが見ている前で、大げさに背中をさすってみせたり、かいがいしく看病している様子をみせたりした。
が、それがどこか演技ぽい(?)。
あるいはその周辺から聞こえてくるうわさと、どうも一致しない(?)。

(たとえば献身的なボランティア活動をしていると本人は言うのだが、その一方で、100円、200円単位のお金のことで、ケチケチするなど。)

で、しばらく連絡を取らないでいたりすると、その女性のほうから電話がかかってきて、看病で苦労しているというような話を、長々とする。
ささいなことでも、大げさに言う。
たとえば「歯ブラシがなくなってしまったので、冬の寒い日だったが、あちこちの店を回って、買ってきた」とか、など。
そういうことをこと細かく話す。
ついでに「実の息子が東京にいるのだが、何もしない」とこぼしたりする。

そこで「それはたいへんですね」「あなたは偉い」と私が言っている間は、どこか機嫌がよい。
しかし批判めいたことを言ったりすると、そのままパニック状態になってしまう。
そのときも、「今では歯ブラシなど、コンビニでも売っていますよ」と私が言うと、急に理由にもならない理由をつけて、怒りだしてしまった。

で、その弟氏は、10年ほど前にある病気で亡くなったが、葬儀場から出棺というとき、その女性は、気が狂ったように大泣きしてみせた。
サメザメと泣くというよりは、ギャーギャーと泣きわめくといったふうだった。
が、そのあと、初七日の法事も同日の夕刻にしたのだが、逆に躁状態になってしまった。
喪主は、その弟氏の息子が一応、務めていたが、無視。
自分が葬儀の喪主であるかのように、はしゃいでいた。

●ごく普通の人

これは代理ミュンヒハウゼン症候群の人に共通することと言ってもよいかもしれないが、どの人も、一対一で会って話すと、ごくふつうの人という印象を受ける。
どこか「?」という印象をもつこともあるが、会っているときには、わからない。
「おしゃべりな人」「よく気がつく人」という印象をもつことが多い。
こちらが代理ミュンヒハウゼン症候群ではないかと疑いながら観察してみたとき、はじめてそれがわかる。
もちろん代理ミュンヒハウゼン症候群という言葉すら知らない人も多い。

(ただし人前では献身的な介護者を演ずるため、まわりの人たちは、「やさしい人」「できた人」「人格者」という評価をくだすことが多い。)

共通する特徴を列挙してみる。

(1)人格のつかみどころがない(どういう人なのか、よくわからない。)
(2)わざとらしい介護、看病を繰り返す(人が見ているときだけ、それをする。)
(3)自己中心性が強く、一貫性がない(いつも目立った言動を繰り返す。)
(4)世間体、見栄、体裁にこだわる(いつも他人の目を気にしている。)
(5)口がうまく、依存性が強い(相手にへつらう、相手の機嫌をとる。)
(6)自分への批判を許さない(批判されたとき、パニック状態になる。)

が、何よりも最大の特徴は、(5)「私は私」という生きざま、あるいは哲学がないということ。
そういったものをもつだけの、知的能力もない。
が、ここでも誤解してはいけないことは、情報量が多いとか、頭の回転が速いとか、そういうのは、ここでいう知的能力ではない。

たとえばその病気については、医者も驚くほどの知識をもっていたりする。

ここでいう知的能力というのは、深い思考性、深い洞察力、他人との共鳴性に裏づけられた、哲学的な一貫性をいう。
わかりやすく言えば、その人らしい生きざまをいう。
またそれがないから、結果として、代理ミュンヒハウゼン症候群としての症状を示すことになる。

……と書くと、このタイプの人は、全面的に加害者かというと、そうでもない。
同時に、このタイプの人自身も、何らかのトラウマをかかえていると考えてよい。
過去における心のキズが遠因となって、代理ミュンヒハウゼン症候群的な症状を引き起こすようになったと考える。

なおウィキペディア百科事典によれば、演技性人格障害※については、つぎのような特徴をあげている。

(1)他人から美化され注目されることを望む
(2)自分は他人に対して関心を払わない。
(3)他人を尊敬することもしない。
(4)他人の心身の痛みを理解できない、とある。

(注※:以下、ウィキペディア百科事典より抜粋)

●虚偽性人格障害

この障害の持ち主は、自分の病気の遍歴を劇的に語るが、詳細に問われるとその中身が急に曖昧で、一貫性が無くなる。また、病気に関してきわめて聞き手の興味を持たせる話をすることが多い。

一般的に医学用語や病院に関する知識が豊富であり、これらの用語を駆使して嘘の病状を訴える空想虚言癖を持つ事が多い。最初に訴えた症状が陰性だと分かると新たな訴えを始め、虚偽症状を作り出す。また病院によって、症状を否定・虚偽だと通告されると、即座に退院し、別の病院へ放浪したりすることもある。

この症状をもつ人の根本的な動機は、被虐嗜好や幼児期の満たされなかった愛情を満たすことであり、そのため、一般の人が避ける手術などを、世話をしてもらえるという理由で、積極的に受けたがる。

しかし、嘘はいつまでも通用せず、矛盾した検査結果などで作為的な身体症状である事が暴露される。反応は、多くの場合逃げ出す事で、他の病院で新たな身体症状を作り上げて入院するといったことを繰り返す。医者は、治療の努力を裏切られた事から怒りをもつ事が多い。身体症状領域だけでなく、精神病領域でも約0.7%の虚偽性障害の人がいる。

この障害では、本人だけでなく子どもなどを利用する場合があり、そのときも騙すための手口は同じである。騙すための手段や、不必要な手術を経ることによって、実際に子どもがダメージを負う事が多く、死に至る場合もある。母親と引き離すことによって"病状"は回復する。これは『代理ミュンヒハウゼン症候群』と呼ばれる。

●演技性人格障害

演技性人格障害(えんぎせいじんかくしょうがい)は、日常生活の中において役者の演技のような行動をし、その結果自分が注目の的とならなければ大きなストレスを受けるため、自己破壊的な行動や、或いは自己破壊的なまでに挑発的な性行動を取ったりする精神疾患である。

もともと人は、ウィリアム・シェイクスピアが「物みな舞台、人みな役者」(『お気に召すまま』)と表現したように、職業人として、家庭人として、友人として、或いは行きずりの他人としてのペルソナを場合によって被り分けるものである。だが本症に於いては、こうしたペルソナの使い分けができず、ある一つのペルソナにこだわる事によって社会生活に支障を来たす。

9割が女性であるが、これに対し反社会性人格障害では生涯罹患率が、それぞれの文化圏で本症と同程度であり、こちらは9割が男性である(他に、いずれの疾患も「他人から美化され注目されることを望むが、自分は他人に対して関心を払わず、他人を尊敬することもしない」、「他人の心身の痛みを理解できない」などの病像が似ている)ことから、同じ疾患が性差として現れた物であるという解釈もあり、その原因となる神経伝達物質や遺伝子の探索が行われている。

演技性人格障害と関連する精神疾患にプソイドロギア・ファンタスティカ、いわゆる病的虚言症がある。自分を実際以上に見せるために、あらゆる妄想虚言を吐く、一群の病者である。有名人や権力者と知り合いであるかのように、会話中にはネーム・ドロッピングを行う。高い知性を伴えば、スタンドプレイの好きな、権力志向の人物と言う評価内に納まる事もあるが、多くは周囲との利害を調整できず、詐欺などの犯罪を犯すこともある(以上、ウィキペディア百科事典より抜粋)。

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同じ代理ミュンヒハウゼン症候群でも、相手が子どものばあいは、まだ対処もしやすい。
しかし相手が祖父母や両親、さらには兄弟のばあいは、介入そのものが、むずかしい。
家庭の事情が複雑にからんでいることが多い。
またそれ以外に介護者(看護者)がいないというケースもある。
子どものように強制的に保護施設に収容するということができない。



情報・画像の出展:はやし浩司先生

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当サイトでは「はやし浩司」様のご厚意により許可を得て掲載させていただいております。


【はやし浩司先生のプロフィール】

はやし浩司先生1947年岐阜県生まれ。

金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。

独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。

現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。

●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。

うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。

「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。

●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。

●現在は、インターネットを中心に活動中。

メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、

電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。

「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。

(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)

過去の代表的な著書

子育て格言ママ100賢1子育て格言ママ100賢子育て格言ママ100賢子育てはじめの一歩

子どもの心・100の育て方目で見る漢方診断クレヨンしんちゃん 野原家の子育て論子育てストレスが子どもをつぶす

ドラえもーん・野比家の子育て論 子育て最前線のあなたへ受験に克つ子育て法ポケモン・カルト―あなたの子どもがあぶない!

・・・などなど30冊余り出版されています。

はやし浩司先生のHP・ブログ

はやし浩司のホームページ はやし浩司先生のメインサイトです。
子育て・幼児教育など、先生が実践されてきた内容が凝縮されています。
きっと先生の優れた教育感、人間味溢れる魅力をお分かりいただけると思います。
はやし浩司の書籍 先生が執筆をした過去の原稿をダウンロードして読めます。

読者の相談ページや進学問題、パパママの子育て診断ページもあります。

最前線の子育て論byはやし浩司(メルマガ版) メルマガ版「最前線の子育て論byはやし浩司」は2007年10月、
60000誌の中で、TOP-ONEに評価され、2008年のメルマガオブザイヤーを受賞しています。

先生の素晴らしい教育・子育て論を見てみて下さい。

当サイトでも掲載させていただいている記事が盛りだくさんです。
最前線の育児論byはやし浩司(Biglobe−Blog) 最前線の育児論のブログです。
子育てや教育について様々な視点・角度で執筆されています。

最前線の子育て論byはやし浩司 (ヤフーブログ) 最前線の子育て論(ヤフーブログ版)です。
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主に先生の哲学者的な内容を見ることができます。
しかし、先生は博識ですね〜。
お孫様のかわいい画像と、日記、教育論を掲載しています。

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