幼児教育に投資?米イリノイ州シカゴ市

幼児教育に投資?米イリノイ州シカゴ市


ニューヨーク・タイムズ USAで米イリノイ州シカゴ市の教育予算削減の切り札として、義務教育費を大幅に削り、幼児教育に集中投資するといった大胆な提言を行っているという情報が入りました。


ノーベル経済学賞を受賞した労働経済学者ジェームズ・ヘックマンの研究では、約40年にわたり幼児教育を受けて育った人達が成人後にどのような職業に付き、所得金額などがどのように影響をしているのかを追跡調査した結果、驚くような結果を得られたというもの。

3歳〜4歳の頃に幼児教育を受けた人は、幼児教育を受けなかった人に比べ、経済的な成功を収める確率が高いことを突き止めたというものです。


ジェームズ・ヘックマン氏がどのような調査をしたのかその全貌は分かりませんが、ノーベル経済学賞を受賞したほどの方の信頼性・研究結果を見逃すことはできません。


「仕事や社会生活で必要なモチベーションや協調性、集中力、適応力といったものは幼児期にほぼ決まってしまうと考えられている。」という非常に興味深い内容です。


ただ、行政(シカゴ)として義務教育などよりも幼児教育に集中投資したほうが良いといった極端な考え方には反論も出そうですが、幼児教育の大切さ・重要性を数字・データによってある程度立証するものですので注目すべき内容です。


教育研究で大変信頼性の高い「Benesse教育研究開発センター」でも、「就学前教育の投資効果から見た幼児教育の意義」として大阪大学社会経済研究所教授の大竹文雄先生からもジェームズ・ヘックマン氏の研究結果についてを掲載しています。
http://benesse.jp/berd/center/open/berd/backnumber/2008_16/fea_ootake_01.html


上記ページでは、アメリカにおける成人後の所得格差の大きな要因として、「学歴の違い」をあげています。
ヘックマン氏は、親の所得層を4段階(最も高い所得者層・2番目に高い所得者層・2番目に低い所得者層・最も低い所得者層)に分け、年齢ごとの学力データ推移を分析しています。
その結果、6歳の就学時点で学力差がついており、就学後に様々な教育投資を行っても容易に縮まることがないという結果が出ています。


経済的に恵まれないアフリカ系アメリカ人の3〜4歳の子ども達を対象にした「ペリー就学前計画」の研究結果と、脳科学の知見とを結びつけながら分析を行った結果、この度の大胆な提言を行った要因になっています。
詳しい内容
http://benesse.jp/berd/center/open/berd/backnumber/2008_16/fea_ootake_02.html


また、厚生労働省による、幼児教育無償化計画の中間報告でも
「幼児教育は幼児の望ましい発達をもたらすという教育的効果のみならず、社会経済的効果を有しており、その波及効果は社会経済全体に及ぶものである。
このことについては、近年、諸外国において、米国でのペリー就学前計画における研究を始め、英国やニュージーランド等での大規模追跡調査などで、質の高い幼児教育が、その後における成績の向上や進学率の上昇、所得の増大、犯罪率の減少をもたらすなど、教育的・社会経済的効果を有するとの実証的な研究成果が得られている。」
といった内容を報告しています。[PDF]
http://www.mhlw.go.jp/shingi/2009/05/dl/s0519-6l_0001.pdf#search='ペリー就学前計画'

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http://www.adobe.com/jp/products/acrobat/readstep2.html


根拠ともなりえる専門的な知見や研究結果からも、幼児期に適切で質の高い教育を行うことは非常に意味があるという内容になっています。
※ただ、あまり極端な判断をしてほしくないので言いますが、学力が重要ということにばかりにとらわれ、就学前からどんどん詰め込み教育を行うことは決して適切な幼児教育ではありません。


上記研究結果や分析結果からも、世界的に幼児教育や幼児教育への投資効果について感心が高まっていることは間違いないでしょう。
適切な幼児期の教育について、もっと多くの人達に関心を寄せてくれることを願っています。



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