「裸で生きる」 はやし浩司先生の育児・教育指導
私には60人近いいとこがいる。
そのいとこの中でも、1番の出世頭(こういう言い方は好きではないが)は、京都に住むUさんだ。
Uさんは某一流大学(この言い方も好きではない)を出たあと、これまた某一流銀行(この言い方も好きではない)に入社。
あとはトントン拍子に出世して、現役時代はその銀行のドイツ支店の支店長も経験している。
このUさんと同じ歳のいとこに、Bさんがいる。
Bさんは田舎の中学を卒業すると、理容師なり、今は長野県の山村で理容店を営んでいる。
魚釣りがうまく、そのあたりでは「名人」というニックネームで呼ばれている。
が、それだけではない。魚釣りが高じて、Bさんは釣り竿を自分で作るようになり、今ではBさんが作る釣り竿は、「芸術品」とまで評判されている。
私はときどきUさんとBさんを頭の中で比較する。
一昔前の尺度でみれば、Uさんは勝ち組み、Bさんは負け組みということになる。
しかし今、結果としてこの二人を比較すると、勝ち組み、負け組みという言い方すら、空しく聞こえてくる。Uさんはあのバブル経済が崩壊したあと、子会社の金融会社に出向している。
それなりに出世したとはいえ、し烈な競争世界で犠牲にしたものも多い。
金融会社に出向する少し前、Uさんは私の家にやってきて、こう言った。
「いえね、こうなってみると、何もかもむなしいよ。女房なんか、『私の人生は何だったの。返して!』と言って、ぼくを困らすのだよ」と。
Uさんはともかくも、夫の出世を陰で支えてきた妻の悲哀も、また大きい。
もちろん今でもUさんは、自慢のいとこだ。
ときどきいとこ会を開くが、Uさんが席の中央に座っても、それをおかしいと思う人は一人もいない。
人格的にも、Uさんは、すぐれた人だ。
しかし今、もし私にもう一度人生が与えられ、Uさんか、それともBさんのどちらか一つの人生を選べと言われたら、私は迷わず、Bさんの人生を選ぶ。
現在の私の生活そのものがBさんのそれに近いこともある。が、理由はもっとほかにある。
人は生きるために、食べる。
食べるためにお金を稼ぐ。
そのお金を稼ぐために働くとしたら、働くことはあくまでも補助的なことだ。
その補助的なことが、本末転倒して、「柱」になったとしても、それは錯覚でしかない。
Uさんは銀行という会社のために人生を捧げたが、銀行に人生を捧げること自体おかしなことなのだ。
一見華々しい社会に見えるが、それは生きることとは本来、無関係なものである。
いくら華々しく働いたとしても、その人の人生が豊かになるわけではない。
人生の豊かさ、美しさは、もっと別のところにある。
もっと言えば、その人が裸になったとき、その人の価値が決まる。
つまり「生きる」という原点をみる限り、BさんのほうがUさんより、はるかに豊かな人生を送ったということになる。Bさんには地位や肩書きがないにしても、それがないからといって、Bさんの人生には何ら影響はない。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー4
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。