「学力の低下が心配?」 はやし浩司先生の育児・教育指導
2002年3月末の読売新聞社の調査によれば、小中学校の教科内容が削減されることに対して、67%もの人がそれに反対していることがわかった。
「新学習指導要領、削減反対67%、完全学校週5日制、反対60%(賛成36%)」など。
とくに教科内容の削減については、小学校高学年児をもつ親の71%が、また中学生をもつ親の73%が反対していることがわかった。
で、問題はその理由だが、トップは、「学力が低下する」。これが69%。
小学校の高学年児をもつ親の76%、中学生をもつ親の74%が、そう答えている。
読売新聞は「学力低下に対する危機感をもっているため」と分析しているが、本当にそうか。
これらの親たちは、本当に「学力が低下する」ことを心配しているのか。
実は、これらの親たちが、学力の低下を心配しているというのは、ウソ。まったくのウソ。
これらの親たちが心配していることは、「学力の低下」ではなく、「自分の子どもが受験競争で不利になる」ことを心配しているのだ。
簡単に「3割削減」というが、3割といえば、6年掛ける0.3で、約1.8年分ということになる。
わかりやすく言えば、小学校の6年間のうち、約2年分が削減されるということ。
これからは今まで小学4年で勉強していたことを、6年ですることになる。
私立小学校や中学校は「削減しない」と言っているから、この差は大きい。
受験ということになったら、公立学校へ通っている子どもは、絶対に不利である。親たちが心配している点は、すべてこの一点に集中する。
今、日本の教育はにっちもさっちも、たちゆかなくなってきている。
中学1年生で、私の推計でも、掛け算の九九がまだじゅうぶんでない子どもが、20%弱もいる(推計……というのも、掛け算の九九は言えても、瞬間に「サンパ?」と聞かれても答えられない子どもも多い。
ほとんど九九を言えない子どももいれば、ところどころあやしい子どももいる。調査をするにも、基準の設定がむずかしい。)
週刊ポスト誌(02年4月12日号によれば、小学校の6年生で、「九九のできない子ども」は、「2〜3割はいる」)ということだそうだ。
全体として、約20%の中学生は、掛け算の九九すら満足にできないとみてよい。
そういう子どもが、一方で、1次方程式だの2次方程式だのを学んでいるおかしさを、あなたは想像できるだろうか。ともかくも、「3割削減」は、こうした現状の中から生まれた。
しかし本当の問題は、このことではない。
本当の問題は、「なぜ親たちが心配するか」ということ。もっと言えば、受験勉強の深層部分にメスを入れないかぎり、この問題は解決しない。
なぜ親たちは、自分の子どもが受験競争で不利になることを心配するか、である。
それは当然のことながら、「受験」という制度が、この日本では人間選別の手段として使われているからにほかならない。
さらに言えば、この日本には、受験で得をする人、損をする人、それがはっきりとしている。そういう不公平社会があることこそが問題なのだ。
そこにメスを入れないかぎり、この問題は解決しない。絶対に解決しない。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー11
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。