「思考について」 はやし浩司先生の育児・教育指導
当然のことながら、「思考」は、多くの哲学者の基本的なテーマであった。
「われ思う、ゆえにわれあり」と言ったデカルト(「方法序説」)、「思考が人間の偉大さをなす」と言ったパスカル(「パンセ」)、さらに「私は何か書いているときのほか、考えたことはない」と、ただひたすら文を書きつづけたモンテーニュ(「随想録」)などがいる。
ところが思考するということは、それ自体にある種の苦痛がともなう。
それほど楽なことではない。それはたとえば図形の証明問題を解くようなものだ。
いろいろな条件を組み合わせながら解くのだが、それで解ければよし。
しかし解けないときの不快感は、想像以上のものだ。子どもたちを見ていても、イライラして怒りだす子どもすらいる。
もっともこの段階でも、知的遊戯を楽しむような余裕や、解いたあとの喜びがあれば、まだ救われる。
大半の子どもは、「解け」と言われて解き始め、解けなければ解けないで、ダメ人間のレッテルを張られてしまう。
だからますます思考するということに、苦痛を感じてしまう。が、これは数学の問題だが、しかし多かれ少なかれ、思考するということには、いつも同じような苦痛がついて回る。
それで結論が得られれば、まだ考えることもできるが、そうでなければそうでない。
そこで大半の人は、無意識のうちにも、考えることを避けようとする。一度そうなると、思考にもいくつかの特徴が表れる。
●ループ性
……10年1律のごとく、同じことを考え、それを繰り返す。
とくに人生論や価値観など、思考の根幹にかかわるようなことについて、何ら変化がない。
●退化性
……思考が停止すると、その段階から思考は退化し始める。
それはスポーツ選手が、練習をやめるのに似ている。練習をやめたとたん、技術は低下する。思考も同じ。
●先鋭化
……思考が縮小化するとき、多くのばあい、その思考は先鋭化する。
ものの考え方が極端になったり、かたよったりするようになる。
こうした現象が見られたら、その人の思考は停止したとみたとよい。
もちろんこのほか、年齢的な問題もある。
私も50歳を過ぎてから、急速に集中力が衰えたように感ずる。
集中力が衰えたから、その分時間もかかるし、それに鋭さがなくなったように感ずる。そういうことはある。
で、子どもの問題……というより、これは親の問題かもしれないが、20歳代で思考が停止する人もいれば、60歳、70歳代になっても停止しない人がいる。
個人差というより、それまでにどのような教育を受けたかで決まる。概して言えば、日本の教育は、子どもの思考を育てる構造になっていない。
それが結果として、世界的にみても、特異な日本人像をつくりだしていると考えられる。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー10
NO’217〜NO’240
●新居の関所 | ●一芸論 |
●便利な世界 | ●一芸は聖域 |
●案ずるより産むがやすし | ●フリ勉、ダラ勉、時間ツブシ |
●威圧で閉じる子どもの耳 | ●勉強が苦手な子ども |
●よい子論 | ●「今」の価値を忘れない |
●子どもの家出 | ●ええじゃないか |
●現場主義 | ●子どもの創造力 |
●子どもの意地 | ●習うより慣れる |
●子どもの自我 | ●子どもの嫉妬 |
●いじめられっ子は徳をつむ? | ●子どもの闘争心 |
●ホームスクール | ●権威主義者 |
●いたずらとジョーク | ●無限ループの世界 |
NO’1〜NO’24 | NO’73〜NO’96 | NO’145〜NO’168 |
NO’25〜NO’48 | NO’97〜NO’120 | NO’169〜NO’192 |
NO’49〜NO’72 | NO’121〜NO’144 | NO’193〜NO’216 |
NO’217〜NO’240 | NO’241〜NO’264 | NO’265〜NO’282 |
NO’283〜NO’292 |
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。