「親孝行論」 はやし浩司先生の育児・教育指導
ある地方の、ある老人ホームの責任者から聞いた話。
そのホームでは、(どこでもそうだそうだが)、老人たちはいつも、息子や娘の孝行話ばかりを自慢しあっているという。
孝行息子や孝行娘をもった老人は、それを自慢げに誇示し、そうでない老人は毎晩のように悔しがっているというのだ。
そこで私が「どういう子どもを、孝行息子や孝行娘というのですか」と聞くと、こう話してくれた。
「要するに親にいかに尽くすかで決まるんですなア」と。
つまり親への犠牲度、忠誠度、貢献度、献身度、服従度で決まるという。
老人たちのさみしい気持ちはわからないわけではないが、それにしても、それ以上にさみしい話ではないか。
私はその話を聞いたとき、まず最初に、「私はそうはなりたくない」と思った。
この日本では親孝行が、美徳のひとつになっている。
子育てや教育の中心に考えている人も少なくない。
しかし親孝行するかしないかは、子どもの問題。子どもの勝手。
少なくともそれは、親が求めるものではない。
いわんや子どもにそれを強制したり、押しつけてはいけない。
親子といえども、そこは人間関係。親孝行があるとするなら、それはそういう人間関係から、自然に発生するものでなければならない。
親孝行をしないからといって、その子どもが否定されたり、またしたからといって、その子どもの価値をあげるようなことはしてはいけない。
人にはそれぞれの思いがある。
複雑な家庭環境や、さらに複雑な過去を背負っている人はいくらでもいる。(親をだます子どもはいるが、世の中には子どもをだます親だっている。
例外とはいえ、子どもを殺す親だっているのだ!)むしろ日本人で問題なのは、安易な孝行論をふりかざし、子どもに向かっては「産んでやった」「育ててやった」と、親の恩を子どもに押し売りしてしまうこと。
子どもは子どもで、「産んでもらった」「育ててもらった」と、恩を着せられてしまうこと。
結局は、親も子どもも、自立できない親、自立できない子どもになってしまう。
それが日本人独特の親子関係といえばそれまでだが、しかしそれは決して世界の標準ではない。
極東の、アジアの小さな島国でしか通用しない、親子関係といってもよい。
……と書くと、決まって「はやしの意見は、欧米かぶれしている」と言う人がいる。
しかし事実は逆で、日本の若者で、「将来、どうしても親のめんどうをみる」と答えているのは、20%もいない。アメリカも含めて、欧米の若者たちはどこも60%以上である(総理府調査)。
日本は今、大きな過渡期にきている。
形だけの親子、形だけの家族から、人間関係を基本に置いた親子、人間関係を基本に置いた家族への移行期ととらえてよい。それはもう欧米化というより、グローバル化といってもよい。日本人が好む孝行論も、そのグローバル化の中で、もう一度考えてみる必要があるのではないだろうか。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー10
NO’217〜NO’240
●新居の関所 | ●一芸論 |
●便利な世界 | ●一芸は聖域 |
●案ずるより産むがやすし | ●フリ勉、ダラ勉、時間ツブシ |
●威圧で閉じる子どもの耳 | ●勉強が苦手な子ども |
●よい子論 | ●「今」の価値を忘れない |
●子どもの家出 | ●ええじゃないか |
●現場主義 | ●子どもの創造力 |
●子どもの意地 | ●習うより慣れる |
●子どもの自我 | ●子どもの嫉妬 |
●いじめられっ子は徳をつむ? | ●子どもの闘争心 |
●ホームスクール | ●権威主義者 |
●いたずらとジョーク | ●無限ループの世界 |
NO’1〜NO’24 | NO’73〜NO’96 | NO’145〜NO’168 |
NO’25〜NO’48 | NO’97〜NO’120 | NO’169〜NO’192 |
NO’49〜NO’72 | NO’121〜NO’144 | NO’193〜NO’216 |
NO’217〜NO’240 | NO’241〜NO’264 | NO’265〜NO’282 |
NO’283〜NO’292 |
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。