「便利な世界」 はやし浩司先生の育児・教育指導
便利さはそれになれると、感覚がマヒする。私のきわめて身の回りのことを書く。
10年近く前から私はワープロを使うようになった。いや、もう15年になるかもしれない。
当初私は、その便利さに圧倒された。そのワープロが今度は、パソコンにかわった。
私はこれまたその便利さに圧倒された。
文を書くだけではなく、原稿の送受信まで、それこそ瞬時にやってのける。
そこで私はさらに便利にするため、周辺機器を買いそろえた。
プリンターやスキャナーはもちろんのこと、ほとんどの周辺機器はとりそろえた。で、今では私の部屋は、足の踏み場もないほどコード類が走り回っている。
パソコンだけで6台だから、どの程度のコードかは、わかる人ならわかると思う。
が、便利というのは恐ろしいものだ。
そのつど格段に私の仕事は便利になったが、気がついてみると、最近ではマウスをクリックするだけでも、不便に感ずるのだ。
ワープロの時代は文書をそのつどフロッピーに保存し、プリントのたびに紙をワープロに設置した。
印刷時間も今の5〜6倍はかかったのではないか。
もちろん原稿は封筒に入れ、真夜中でも速達で出すため、郵便局まで車を走らせた。(それでも当時は当時で便利になったものだと喜んでいた!)それがマウスをクリックするだけでも、不便に感ずる?
たとえばOCRというソフトがある。
スキャナーに原稿をはさんで、それをスキャンすると、その原稿の文字をパソコンの中に取り込んでくれる。
昔のように原稿を見ながら、それをカチャカチャとキーボードをたたいて入力する必要など、もうない。
ないにもかかわらず、それがめんどうなのだ。
女房からひとつの仕事を頼まれているが、「まだア?」とこのところ毎日のように催促されている。やる気になれば、5分程度で、数枚の原稿を読み取ることができるというのに!
だいたいにおいて書斎に座ったら最後、動くのは指先だけ。
体を動かさねばならないようなことは、めったにない。それこそ紙の補給ぐらいなものか。
だからこういう世界にどっぷりとつかってしまうと、体を動かすこと、たとえば立ちあがってすわることが重労働に思われるから不思議である。
……と考えて、これはもう現代文明に共通する「矛盾」ではないかと思っている。
考えてみれば、ありとあらゆるものがそうなのである。
しかし人間はあくことなく、さらなる便利さを求めて動き回っている。これを進歩というか、はたまた後退というのかは、私にはわからないが、大きな矛盾であることには違いない。あるいはそれは本当に人間が求めているものかどうかは、大きな疑問の残るところでもある。
私は今、この文をその書斎で書きながら、やがて私はその便利さにどこまで体がなれてしまうか、それをそら恐ろしくすら思い始めている。やがて指を動かすことすらめんどうに感ずるようになってしまったら……? それももう時間の問題のような気がするが……。
はやし浩司先生の育児・幼児教育コーナー10
NO’217〜NO’240
●新居の関所 | ●一芸論 |
●便利な世界 | ●一芸は聖域 |
●案ずるより産むがやすし | ●フリ勉、ダラ勉、時間ツブシ |
●威圧で閉じる子どもの耳 | ●勉強が苦手な子ども |
●よい子論 | ●「今」の価値を忘れない |
●子どもの家出 | ●ええじゃないか |
●現場主義 | ●子どもの創造力 |
●子どもの意地 | ●習うより慣れる |
●子どもの自我 | ●子どもの嫉妬 |
●いじめられっ子は徳をつむ? | ●子どもの闘争心 |
●ホームスクール | ●権威主義者 |
●いたずらとジョーク | ●無限ループの世界 |
NO’1〜NO’24 | NO’73〜NO’96 | NO’145〜NO’168 |
NO’25〜NO’48 | NO’97〜NO’120 | NO’169〜NO’192 |
NO’49〜NO’72 | NO’121〜NO’144 | NO’193〜NO’216 |
NO’217〜NO’240 | NO’241〜NO’264 | NO’265〜NO’282 |
NO’283〜NO’292 |
情報・画像の出展:はやし浩司先生
※このページの文章・及び画像の著作権は「はやし浩司」様が保有しています。
当サイトでは「はやし浩司」様のご厚意により許可を得て掲載させていただいております。
【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。