「自分を知る」 はやし浩司先生の育児・教育指導
多動児(AD・HD児)と呼ばれる子どもがいる。
診断基準のひな形が、2001年の春にできたばかりである。
現在の今も、その指導法については、思考錯誤の段階と考えてよい。
それはともかくも、実際には、このタイプの子どもは、20名のうち約1人の割でいる。
が、問題はこのことではない。
D君(中2)の男の子がいた。
私はその子を、幼稚園の年中児のときから、中学3年まで教えた。
多動児だった。そのため、本当に苦労した。親も苦労した。学校の先生も苦労した。
どう苦労したかは、教えたものでないとわからないだろう。
が、その子も、小学高学年になるころには落ち着きはじめ、中学生になるころには、騒々しさは残ったものの、まあ、ふつうの子どもという感じになった。
そのD君にこう話しかけたときのこと。
私がそれとなく、「君は、小学生のころ、腕白で、みんなに迷惑をかけたのだが、それを覚えているか」と聞くと、D君は、こう言った。
「いいや、ぼくは何もしてない。みんな、ぼくのことを目の敵にして、ぼくばかり叱った」と。
そこであれこれ遠まわしな言い方で、D君自身に問題がなかったのかを聞いてみたが、D君は「なかった。ぼくはふつうだった」と。
私はD君を前にして、考え込んでしまった。
D君はまるで自分のことがわかっていなかった。
おそらく彼が教職の道を選んで、教師になって、多動児について学んでも、「自分がそうだった」とは決して思わないだろう。
いや、私が考え込んだのは、実のところD君のことではない。自分のことだ。
私は私のことは一番よく知っていると思っている。
しかしそう思っているのは、自分だけ。実のところ、自分のことはまったくわかっていないのでは……、と。
自分を知るということは、本当にむずかしい。
方法がないわけではないが、それについてはまた別の機会に書く。
ともかくも、私はD君を前にして、本当に考え込んでしまった。
「人間というのは、そういうものか」と。D君はそれを私に教えてくれた。
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情報・画像の出展:はやし浩司先生
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【はやし浩司先生のプロフィール】
1947年岐阜県生まれ。
金沢大学法文学部法学科卒業。
日豪経済員会給費留学生として、オーストラリアメルボン大学ロースクール(法学院)研究生、三井物産社員、幼稚園教師を経て、浜松市にてBW(ブレイン・ワーク)教室、幼児研究所を設立。
独自の哲学・教育論をもとに幼児教育の実践を行っています。
現在は教育評論家として、ホームページやブログ、メルマガ、ユーチューブ等を利用しながら執筆活動に専念しています。
●著書に「子育て最前線のあなたへ」(中日新聞社)、「おかしな時代のまともな子育て論」(リヨン社・2002年3月発行)、「ドラえもん野比家の子育て論」(創芸社)など、30冊余り。
うち4冊は中国語にも翻訳出版されています。
「まなぶくん幼児教室」(学研)、「ハローワールド」(創刊企画・学研)などの無数の市販教材も手がけ、東洋医学、宗教論の著書も計8冊出版されています。
●教育評論家、現在浜松市伝馬町でBW教室主催。
●現在は、インターネットを中心に活動中。
メルマガ・オブ・ザ・イヤー受賞(08)、
電子マガジン読者数・計3000人(09)、ほか。
「BW公開教室」を、HP上にて、公開中。
(HPへは、「はやし浩司」で検索、「最前線の子育て論byはやし浩司」より。)
過去の代表的な著書
・・・などなど30冊余り出版されています。